★ベルリン・フィルの創立記念日である5月1日に毎年行われている、ベルリン・フィルのヨーロッパコンサート。ヨーロッパ各地のホールや歴史的建造物で行われており、夏の野外コンサート、ヴァルトビューネよりも本格的なプログラムを演奏します。美しい建物や街で行われるコンサートは、多くの音楽ファンに支持されているベルリン・フィル恒例のイベントです。
2017年は、指揮者にマリス・ヤンソンス、ソリストにベルリン・フィルの首席クラリネット奏者アンドレアス・オッテンザマーを迎え地中海東に位置するキプロス共和国で行われました。野外特設会場が組まれたのはパフォス城。パフォスはキプロスにある世界遺産で、古代ギリシャ・古代ローマ時代から東ローマ(ビザンチン)帝国時代にかけての都市遺跡です。またギリシャ神話の愛と美の女神アフロディーテ誕生の地としても知られています。2017年はパフォス市が欧州文化首都に制定され、世界的なアーティストらが様々なプログラムを展開。そして今回ベルリン・フィル恒例のコンサートも行われることになりました。キプロスは1970年代に起きた南のギリシャ系、北のトルコ系住民の闘争以来南北が分断されています。ヨーロッパと中東の中継地として長い歴史を持つキプロスですが、色々な文化が混在しており、そうしたキプロスの風土を反映させたプログラミングになっています。
まずウェーバーの「オベロン」序曲から開始され、コンサートが始まる期待感を膨らませます。そしてオッテンザマーのソロによるウェーバーのクラリネット協奏曲。ミュンヘンの宮廷楽団のクラリネット奏者ハインリヒ・ヨーゼフ・ベールマンのために書かれた作品。クラリネットの特色を存分に生かした楽曲で、クラリネットの哀愁を帯びた音色に、愉悦感に満ち溢れた魅力的な作品。ベルリン・フィルの好サポートにオッテンザマーの精緻な演奏は必聴です。アンコールにはベルリン・フィルのチェロ奏者であるシュテファン・コンツが作曲した「ウェーバーの主題によるハンガリー幻想曲」を演奏し、会場を大いに盛り上げています。
メイン・プログラムはドヴォルザークの交響曲第8番。照りつける地中海の日差しの中で演奏することは必ずしも好条件とは言えませんが、そこはさすがベルリン・フィル。ドヴォルザークの憂いをたたえた旋律、各楽器の甘美な響きとヤンソンスの巧みな指揮ぶりにより、高密度な演奏を聴かせてくれます。特に終楽章の輝かしいトランペット、その後に続く多彩な響きは圧巻です、ヤンソンスの見事な手腕と超名人集団のベルリン・フィルの実力を改めて感じるコンサート映像となっています。
またブルーレイの音声は96kHz/24bitのハイレゾ仕様となっており、より高密度な音と映像を楽しむことができます。