ザデラツキー:ピアノ曲集
- アーティスト:ヤーシャ・ネムツォフ
- レーベル:HAENSSLER
- 品番:HC-17035
- ジャンル:ジャンルクラシック器楽曲
- 価格:オープン価格
- 形態:5CD
- 収録時間:CD1 65:32 CD2 64:48 CD3 59:02 CD4 69:58 CD5 55:51
ザデラツキー:ピアノ曲集
ザデラツキー:ピアノ曲集
Disc 1&2
24の前奏曲とフーガ (1937/8)
Disc 3
①祖国【線路/タイガ/工場/黄金色の草原/若い世代/アラス川/熱狂的な一団】(1946)
②前線【前線への道/焦土の故郷/戦闘/防空壕/地図を広げ/恋人からの手紙/敵の背後に/
墓場を越えて/燃える大地/行進】(1944)
Disc 4
①24の前奏曲 (1934)
②小品アルバム【雲/車/隠しごと/メリーゴーランド/プラカード行進】(1929)
③陶器のカップ【野の花々/サーカスの騎手/太鼓とラッパ/大宴会】(1930)
④叙情菌【優しく/歌う/ナイーヴ/左手のための】(1930)
⑤伝説【雲/車/隠しごと/メリーゴーランド/プラカード行進】(1944)
Disc 5
①ピアノ・ソナタ第1番(1928)
②ピアノ・ソナタ第2番(1928)
③ピアノ・ソナタ ヘ短調(1939)
ヤーシャ・ネムツォフ(ピアノ)
録音:2015年7月6-10日/ベルリン・ブランデンブルグ小スタジオ
★フセヴォロド・ザデラツキーは、プロコフィエフと生没年を同じくする作曲家。しかし生涯と評価は対照的で、名は抹消され、作品が公開で演奏されたり録音されることはありませんでした。シュニトケやヴァインベルクの辛い人生がしばしば語られますが、ザデラツキーの悲惨さは桁違いで、帝政時代に皇子の音楽教師をしたことに起因する逮捕と流刑の人生で、定職に就くことも許されず作品も無視されました。
★1920年、ロシア内戦に反革命軍将校として従軍し捕えられますが、音楽の才に気づいた赤軍リーダー、ジェルジンスキーの配慮で処刑を免れます。しかし1926年に何の理由も告げられずに逮捕され、作品はすべて抹殺されました。2年後に釈放され、2曲のピアノ・ソナタや24の前奏曲なども手掛けますが、学生オケでワーグナーやリヒャルト・シュトラウス作品を指揮したことで「ファシストの音楽を普及させようとした」と再逮捕、カムチャッカ半島近くの収容所へ送られます。たいていの囚人は4年ももたずに死亡するなか彼は生き延び、電信用紙の余白に24の前奏曲とフーガを書きとめました。
★現存するザデラツキーの作品はほぼピアノ曲のみですが、再逮捕の際に妻の機転で草稿を隠したため破棄を免れたものが、今回音になりました。20世紀前半のロシア作曲家らしくスクリャービンの影響が感じられるものの、師タネーエフ仕込みの対位法的な書法がロシアでは珍しく興味津々。24の前奏曲にせよ前奏曲とフーガもショスタコーヴィチを先取りし、自由な世界で創作活動に勤しめれば20世紀ロシアを代表する作曲家になりえたことが残念な限り。
★ピアノのための小品は、ソ連系作曲家らしく「工場」「戦闘」「防空壕」のほか、収容所を囲む「タイガ」など聴いてみたくなるタイトルが並びます。
★ザデラツキー発掘に力を注ぐネムツォフ渾身の演奏が見事。20世紀の歴史と音楽に興味があるすべての方々に聴いていただきたいアルバムです。