★奇才ラルフ・プレガーによるチャイコフスキーのドキュメンタリー。とは言っても音楽物でも伝記物でもなく、彼の人生と死を同性愛の見地から考証しています。
チャイコフスキーが男色家であったことは知られていますが、何分にもロシア文化の象徴の大作曲家だけに、タブーの領域とされてきました。このドキュメンタリーでは、手紙や日記から彼のゲイライフや偽装結婚の真実などを暴露。映像は幻想的で、腐女子好みのBL的な美しさに満ちています。さらに同じ世界の住人であるダンサーのマラーホフやオルガニストのカーペンターが、バレエや音楽でなくチャイコフスキーと同性愛問題について個人的かつ親密な意見を述
べています。その合間にマラーホフ演じるバレエ「チャイコフスキー」の情景や、ドイツのイケメン俳優ダーク・ジョンストンが妄想上のカレ役を演じ、チャイコフスキーの歌曲「ただ憧れを知る者だけが」を妖しげな眼差しで、韓流ポップス風に歌う様もゲイと腐女子狂喜の世界となっています。
★日本語解説書には、ゲイをカミングアウトしている作家・漫画家にして人気ブログ「ゲイです、ほぼ夫婦です」の著者歌川たいじが、同性愛者の視点から見たチャイコフスキーの私生活の足跡をたどっております。今まで知らなかったチャイコフスキーの真の姿と人生を、歌川氏が思慮深くかつ非常に読みやすい文章でまとめており、映像だけでは理解できない繊細なニュアンスまでも日本語解説として書いていただきました。歌川氏ファンならずとも注目の内容と言えましょう。
★「溢れ出る才気、その過剰なエネルギーは苦しみでもある。鬱勃たる情動を恋愛に注ぎ込んでいる最中に、チャイコフスキーは必ず耐え難い打撃に見舞われる。
そして、大きな痛みの中で音楽家として飛躍するのだ。天才チャイコフスキーは生涯、その輪廻から逃れることはできなかった。」(歌川たいじ)
歌川 たいじ
1966年東京都生まれ。作家・漫画家。
1日10万アクセスをカウントする人気ブログ「ゲイです、ほぼ夫婦です」の著者。
サラリーマン時代に全国紙の一面を使った広告でゲイをカミングアウトし、話題に。ゲイであることを公表しながら株式会社リクルートなどでキャリアを積み、その後情報サイト「オールアバウト」の同性愛カテゴリを担当、人気を博す。
主な著書に、自身の壮絶な生育歴をドラマティックに描いた伝説的コミックエッセイ『母さんがどんなに僕を嫌いでも(KADOKAWA)』『母の形見は借金地獄(KADOKAWA)』のほか、ゲイライフの日常を切りとったコミック『じりラブ(集英社) 』などがある。老若男女、セクシャリティを問わず多くの熱烈なファンをもつ。2015年『やせる石鹸』で小説家デビュー。