★アメリカのピアニスト、ジョナサン・ビスが2013年5月にロンドンのウィグモア・ホールで行ったリサイタルのライヴ録音。演奏会プログラムはシューマンとヤナーチェク。シューマンは、ジョナサン・ビスが最も得意とし愛してやまない作曲家の一人ということ。
まず、シューマンの「幻想小曲集」とヤナーチェクの「草陰の小径にて」が交互に演奏されます。「幻想小曲集」は、8曲からなる曲集でそれぞれの楽曲に標題がつけられています。シューマンの複雑な感情の吐露を見事に表現しており、感情に溺れることなく、作品のもつ力に正面から向き合った真摯な演奏を聴かせてくれています。ヤナーチェクの「草陰の小径にて」は、ヤナーチェクの独特の個性が色濃く反映したピアノ作品として広く演奏されています。ここに収録されているのは、全10曲からなる第1集から5曲。この5曲は、ハルモニウムのための曲集として書かれた「スラヴの旋律」からの作品。ジョナサン・ビスは、この2つの作品に強い関連性を見出し、それぞれの作品を交互に演奏することによって、分断されたそれぞれの曲が一つのイメージとして浮かび上がってくるのだと言います。それはまさに後半のプログラム「ダヴィッド同盟舞曲集」につながる選曲といえます。全18曲からなる曲集「ダヴィッド同盟舞曲集」は、シューマンが創造した新しい時代にむけて保守的な敵対者と戦う架空の団体。シューマンの分身である行動的なフロレスタンと、瞑想的なオイゼビウスが、交互、または同時に現れ進んでいきます。ジョナサン・ビスは、それぞれの曲色鮮やかに弾きつなぎ、一つの大きな世界を形成しています。
アンコールには、シューマンがライン川に飛び込む前に作曲されたという「暁の歌」の第5曲が演奏されています。
なお
http://www.wigmore-hall.org.uk/live へアクセスすると、同日のプログラムであった、ベルクのピアノ・ソナタ作品1がフリー・ダウンロードできます。