★2019年2月ウィーン国立歌劇場、カスパー・ホルテン演出、トマーシュ・ネトピル指揮で上演されたモーツァルトの歌劇《イドメネオ》。モーツァルトが24歳の時の作品で、ギリシャ神話の父子の葛藤の物語を、自らの父との葛藤を音楽に投影した記念碑的傑作です。
演出は、デンマークの鬼才カスパー・ホルテン。ミア・シュテンスガードが手掛けた舞台は、古い地図の断片を用いた想像力豊かな舞台美術で、神話の世界が簡潔かつ明確に表現されています。タイトルロールを歌うのは、スイス出身のベルナール・リヒター。近年の活躍は目覚ましく、新世代を代表する歌手として注目されています。本上演でも圧倒的な存在感で舞台を引っ張っており、特に第2幕のアリア「胸のうちにある海は」は、コロラトゥーラが自然な嘆きとなって圧巻です。ヴァレンチナ・ナフォルニツァによるイリアは、息の長い抒情的なカンティレーナを見事歌い上げて、イダマンテ役のレーチェル・フレンケルと表情豊かに愛の二重唱を奏でています。そしてエレットラ役のイリーナ・ルングー。フィナーレのアリアでは、エレットラの狂気と嘆きを、息をのむ歌唱で聴かせてくれます。また、トマーシュ・ネトピルの指揮による雄弁なオーケストラはドラマを盛り上げ、合唱は実に力強く高い演出効果をあげています。
トレイラーはこちら→
https://youtu.be/p4RrnmmRtmM