湖上のオペラ「ブレゲンツ音楽祭」。オーストリアの西端でドイツとスイスの国境近くに位置するブレゲンツで、裕福な市民の資金が投入され1946年からスタートした音楽祭です。
本映像は2022年8月にブレゲンツ音楽祭で上演されたジョルダーノのオペラ《シベリア》です。作曲したウンベルト・ジョルダーノ(1867~1948)はヴェリズモ・オペラを代表する作曲家の一人。脚本はプッチーニの《ラ・ボエーム》《トスカ》の台本を手掛けた、当時売れっ子の作家ルイージ・イッリカが担当。初演は、上演予定だったプッチーニの《蝶々夫人》の代わりに、1903年12月19日ミラノ・スカラ座で行われ、初演は大成功をおさめました。その後ブエノスアイレス、ニューヨーク、サンパウロなどでも上演されるなど高い評価を受け、また1905年にパリでの上演を観たガブリエル・フォーレは「第2幕は、現代の劇音楽が成し得る最も魅力的な音楽である」と称賛したといいます。一方、翌年2月に初演された《蝶々夫人》は散々な結果に終わってしまいました。しかし、今日のレパートリーとしての地位を築いたのは《蝶々夫人》であり、現在では《シベリア》の上演機会はほとんどありません。2022年のブレゲンツ音楽祭では、この両方の作品を上演しており、歴史の一端を垣間見るようです。
《シベリア》は、19世紀前半のロシアとシベリアを舞台に、サンクトペテルブルクの社交界の最高位に上り詰めた女性が、やがて人里離れたシベリアの流刑地で死を迎えるという、社会の衰退を軸にした、悲恋の物語。ジョルダーノの音楽は、ロシア民謡を随所に取り入れ、ロシア的な音楽モチーフによるロマンティックで迫力のある音楽です。
ドラマチックなステファナを見事に演じきったのは、本作がブレゲンツ音楽祭デビューとなったカナダ人ソプラノ、アンバー・ブライド。ステファナと恋に落ちる若い士官ヴァシリには、アレクサンドル・ミハイロフ。歌唱力を要するアリアを朗々と歌いあげます。またヴァシリー・バルカトフの演出は、暗い色調の舞台装置により、冒頭からステファナの絶望的状況を表現しています。
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https://youtu.be/NmLIPo3DvYQ