★2022/23シーズンは、ダニエル・バレンボイムがベルリン国立歌劇場の音楽監督に就任して30年という記念すべき年でした。様々な企画が打ち出される中、もっとも注目されていたのはディミトリ・チェルニャコフ新演出による《ニーベルングの指環》。4夜連続上演をシーズン中に4回行う予定でしたが、バレンボイムが体調を崩してしまったため、3回をクリスティアン・ティーレマンが、もう1回をバレンボイムの弟子でドイツの若手指揮者トーマス・グガイスが務めることになりました。ティーレマンはその後、2024年9月よりバレンボイムの後任としてベルリン国立歌劇場の音楽監督に就任することが決まっています。
そして今回C majorレーベルよりティーレマン指揮による4部作が映像商品としてリリースされます。
巨大な楽劇の幕開けである序夜《ラインの黄金》。ライン河の底でラインの乙女たちに守られていた黄金がアルベリヒに略奪されて、世界を支配する力を持つかわりに呪われた指輪となり、これをめぐる神々、巨人族、小人族の争いが生じた経緯をものがたる作品です。本上演は、チェルニャコフらしく読み替え演出となっており、ヴォータンが所長を務める極秘研究室『ESCHE』を舞台とし、研究所の研究員は神々、そして実験体となるのは人間、巨人という設定。舞台にはガラス張りの研究所が置かれ、その平面図が投影されます。「ヴァルハラ」に見立てられた研究所は、エレベーターで行き来する実験室、会議室など部屋は細かく分かれており、物語を進行するのに重要な役割を果たします。この舞台では神とそれ以外の者は、研究者と被験者としてあらわされていますが、これは現代のシステムとしても置き換えることができ、チェルニャコフの演出は、複雑で難解なこの作品を痛切な皮肉をもって描いています。
ヴォータン役のミヒャエル・フォレは、存在感のある迫力の歌声で圧倒。ティーレマンの指揮も、巨大な音楽を壮大に響かせ、かつ音楽的に細部を緻密に作り上げ、堂々とした演奏を披露しています。
トレイラーはこちら→
https://www.youtube.com/watch?v=aeo9HrhwRhk