★フィンランドのメゾソプラノ歌手ヴィルピ・ライサネンは、ユトレヒトとアムステルダムの音楽院で声楽を学びました。2009年、ザルツブルク音楽祭のルイジ・ノーノの《Al gran sole carico d’amore(愛にあふれる偉大な太陽に向かって)》で国際デビュー。ヴォルフガング・リームやウルヤス・プルッキスのオペラの初演、フィンランド国立歌劇場が上演した細川俊夫のモノドラマ《大鴉》をはじめ、現代の音楽を中心とするレパートリーでオペラハウスとコンサートで活躍しています。
新しいアルバム『Trasparente(透明)』は、ヴァイオリニストとしてのキャリアをもつ彼女の魅力をいっぱいに示すため、ライサネンのために作曲または編曲された「ヴァイオリンと歌」のための作品で構成されました。モデルになったのは、ひとりの歌手がヴァイオリンを弾きながら歌うことを想定して作曲されたホルストの《声とヴァイオリンのための4つの歌》です。
アルバムの制作には彼女の親しい音楽家たちが、作曲、作詞、編曲、演奏と、それぞれの立場で関わりました。ネーデルラント・フィルハーモニー管弦楽団(オランダ・フィルハーモニー管弦楽団)のソロ・ティンパニ奏者、ナンド・ルッソ。作曲家としても活動するオウル交響楽団のチェロ奏者、ハッリ・オステルマン。モーツァルトやヴェーバーのファゴット協奏曲を録音(BIS SA-2467)したオランダ生まれのファゴット奏者、ブラム・ファン・サムベーク(1980–)。ファン・フュフトが編曲した、ジョン・ジェイコブ・ナイルズのクリスマスソング《なぜイエスは》は、オランダのニック・スホルテンがハープを担当しています。
《Trasparente(透明)》を作曲したイルマリ・マエンパーは、オウル生まれの作曲家、サウンドスケープ作家。建築デザイナーとして活躍しています。ネーデルラント室内管弦楽団(オランダ室内管弦楽団)の第2コンサートマスターを務める、リヴァプール生まれのベヴァリー・ジュリー・ラント。オランダのピアニスト、作曲家、プロデューサーのジャン・ファン・フュフト。ウルヤス・プルッキスは、色彩的な語法の音楽で注目された、現代フィンランドを代表する作曲家のひとりです。オスカル・リンドベリが採譜、編曲して親しまれているスウェーデンの懐かしい歌《ダーラナの古い賛美歌(夏の牧舎の古い賛美歌)》は、オルガニストのリスト・アイナリの編曲。J. S. バッハの《平均律クラヴィーア曲集 第1巻 第12番》の《前奏曲》は、ライサネン自身の編曲です。
アルバムの曲はすべて、多重録音ではなく、ライサネンがヴァイオリンを弾きながら歌うスタイルで録音されました。