ハッリ・ヴェッスマン Harri Wessman(1949–)は、現代フィンランドで独自の道を歩む作曲家のひとり。「モダニストの語法に背を向け……ロマンティックな心情と内面的なリリシズムに支えられた作品……」(キンモ・コルホネン)を書いてきました。1987年の《トランペット協奏曲》がもっともよく知られ、児童合唱のための《雪の下の流れは力なく(Vesi Vasyy Lumen Alle)》などの合唱曲も親しまれています。60を超す数の彼の室内楽の作品から、このアルバムでは、ピアノのついた5曲が演奏されます。
《ピアノ四重奏曲》は、クフモ室内楽フェスティヴァルと「フィンランド・ピクチャー・マガジン」の委嘱により作曲されました。〈アパッショナート〉〈ノスタルジコ〉〈ラッセニャート(諦めの)〉〈ブルレスコ〉の4楽章。オストロボスニア室内管弦楽団のソロ・ヴィオラ奏者ハンナ・パッカラ Hanna Pakkala がヴィオラを担当しています。《前奏曲とシシリエンヌは、若い演奏者のために書かれた作品。《ピアノ三重奏曲第2番》は、〈導入(Exordium)〉〈陳述と脱線(Narratio cum digressione)〉〈命題(Propositio)〉〈論述(Argumentatio)〉〈結論(Peroratio)〉の5楽章で構成され《修辞学》の副題がつけられました。ジャズのハーモニーも部分的に感じられる《第1番》とエルッキ・メラルティン室内楽コンペティションの課題曲として委嘱された《第3番》の2つの《ピアノ三重奏曲》は、ともに1楽章の作品。シニッカ・フルスカイネンの『Kevättä ilmassa(春の気配)』が、ジャケットのカバーアートに使われました。