★シャイーとゲヴァントハウス管によるマーラー・チクルス。2011年のマーラー没後100年を記念してスタートしたシリーズで、これまでに第2番、第4番、第5番、第6番、第8番がリリースされており、いずれも充実した演奏で高い評価を受けています。シャイーは当時音楽監督を務めていたロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団と、マーラーの交響曲全集録音を完成させています。シャイーが最初にマーラーを録音したのがベルリン放響との交響曲第10番(クック版)。シャイーは当時を振り返りこう話しています。「楽団の芸術監督に半ば強制的に言われ取り組んだ。しかしあれは私が最初にマーラーの宇宙の中に踏み込んだ貴重な体験であり素晴らしいことであった」。その後シャイーはコンセルトヘボウ管と全曲録音(第10番を除く)を完成させますが、第9番はコンセルトヘボウ管との首席指揮者としての最後のコンサートでまさに全曲演奏の集大成と言える気合いの入った演奏でした。それから10年、新しい手兵ゲヴァントハウス管とのチクルスも、さらに熟考させた音楽をシャイーの明快で切れ味鋭い指揮で聴くことができます。また、世界的なマーラー研究家アンリ=ルイ・ド・ラ・グランジュとの対談も収録され、作品を深く理解することができる1枚です。 ★シャイーは、研究者や指揮者たちが、この交響曲第9番について「死」を連想させる意見を残していることに疑問を呈しています。「ベルクの「ヴォツェック」には、マーラーの交響曲第9番によるオーケストレーションの影響がみられるし、この曲は無限の活力と精神力に満ちた作品で自身の死について考えていたとは到底思えない」。さらに「アダージョッシモのコーダは間違いなく死を予感させるものであるが、交響曲第10番へと導く素晴らしい要素である」と語っています。シャイーは第4番を演奏する際に、1905年にマーラー自身がゲヴァントハウス管を最後に振ったピアノロールを聴いたといいます。そしてワルターが1945年NYフィルを振った演奏と比べるとその演奏時間は同じだったと。シャイーは、マーラーは交響曲第1番以降具体的な速度数値を指定していないこと、そしてマーラーとワルターの演奏時間が一致したことを受け、自分自身の責任は、自己満足にならないよう過去の原点に立ち返らなければならないと語っています。楽譜に記されたことを尊重し、さらにその奥のマーラーの真髄に迫るシャイーの指揮、マーラーを深く掘り下げることによって調和のとれた幅広い見地から音楽を表現しています。 ★また「ACCENTUS MUSIC」ならではの、音楽を理解した素晴らしいカメラワーク、見ごたえのある編集で、映像商品としても魅力的。ジャケット・デザインはシリーズ通して使われているライプツィヒ出身の現代アーティスト、ネオ・ラウフによるものです。