★フランス出身のソプラノ及びアルトサックス奏者エミール・パリジャンと、トリノ出身でフランスの新しいジャズ・シーンの代表的な存在となっているピアニスト/作曲家、ロベルト・ネグロが再びタッグを組み、ドイツ・ミュンヘンにて設立されたプログレ・ジャズやクラシック/現代音楽を扱うACTレーベルより新しいプロジェクトがリリース。
★今回のアルバムが作られるきっかけは約8年前、初めて一緒に演奏したときだった。エミールとネグロはお互いのことをもっと知りたいと思い、家のキッチンで音楽について語り合った。すると、2人ともハンガリー系オーストリア人作曲家のジェルジュ・リゲティが好きだということが分かり、このプロジェクトへと行動を移していった。
★本作のリリース日から2日後にあたる2023年5月28日は、ジェルジュ・リゲティの生誕100周年。その彼の功績に限りないインスピレーションを受けたパリジャンとネグロが、リゲティ作品の根本的要素を深堀りした。まさに今回のアルバムは、”音楽の新たな可能性”ともいえるだろう。
★ジェルジュ・リゲティといえば、映画界を代表する偉大な監督スタンリー・キューブリックの作品『2001年宇宙の旅』、『シャイニング』、『アイズ・ワイド・シャット』のサウンドトラックに使用されていることでも有名だが、リゲティの挑戦的で複雑な音楽は、その例外を除いては、大衆に認知されることはほとんどなかった。しかし、音楽家の間では彼の地位とその影響力は計り知れないものがある。
★今作は魅力的な試みである。パリジャンとネグロによって楽器のあらゆる音色の可能性が追求されている。テンポは速めの傾向にあるが、2人が絶えず互いにフォローし合うことで、驚くほどリリカルな温かみが生まれ、リゲティへのオマージュとして、彼らなりの解釈で現代音楽を響かせている。