★SACDハイブリッド盤。スウェーデンのトランペット奏者、ホーカン・ハーデンベルガー(ハーデンベリエル)(1962–)のために書かれた音楽。ブレット・ディーンとルカ・フランチェスコーニの協奏曲(BIS SA 2067)につづき、ベッツィ・ジョラスとオルガ・ノイヴィルトの協奏的作品のアルバムがリリースされます。
★ベッツィ・ジョラス(1926–)は、パリ生まれ。1940年からアメリカで一般教育を受けた後、ポール・ベップルに作曲、ヘレン・シュナーベルにピアノ、カール・ワインリックにオルガンを学びました。1946年、ベニントン大学を卒業後、パリ音楽院でミヨー、シモーヌ・プレ=コサード、メシアンの下で作曲の研究を続けました。「ピアノ、トランペットと管弦楽のための協奏的組曲」として書かれた《真実の物語》は、2015年の作品です。「ピアニスト」のミュラロと「トランペッター」のハーデンベルガーのふたりから寄せられた、一緒に演奏したいという願いを叶えたという「真実」、「私たちが聞かないようにしている音」を意識して使ってみせたという「真実」。「モンテカルロの芸術の春」フェスティヴァルの委嘱で作曲されました。
★オーストリアの作曲家オルガ・ノイヴィルト(1968–)は、子供ころからトランペットの音に魅せられ、プロのジャズ・トランペッターをめざしたものの、15歳の時、交通事故で顎を負傷したため夢を実現できなかったといいます。「世界を眺める時の見方の多様性」を意味する曲名をもつ《…miramondo multiplo…》は、トランペットと大編成の管弦楽のために書かれた、夢幻的とも言える瞬間をさまざまに示した作品です。「空気」ないし「雰囲気」と「旋律」を意味する “aria”(アリア、エア)のタイトルを共通して与えられた5つの楽章で構成されています。〈天使のアリア(aria dell’ angelo)〉〈記憶のアリア(aria della memoria)〉〈冷血のアリア(aria del sangue freddo)〉〈平安のアリア(aria della pace)〉〈喜びのアリア(aria del piacere)〉。2006年ザルツブルク音楽祭、ハーデンベルガーとピエール・ブーレーズ指揮ウィーン・フィルハーモニーの共演で初演されました。
★ジョラスとノイヴィルトの間に置かれたサリー・ビーミッシュ(1956–)のトランペット協奏曲は、彼女のオーケストラ作品集(BIS SA 2156)に入っていたものと同じ録音です。イタロ・カルヴィーノの『見えない都市』、「12歳の息子が家で鳴らしていたジャズ・プレーヤー、クリフォード・ブラウンのトランペットの豊かな音」と「もちろん、ハーデンベルガーの素敵な演奏」をインスピレーションに作曲された「前奏曲:アダージョ - アレグロ」「アンダンテ」「アレグロ - プレスト」の3楽章の音楽です。