★SACDハイブリッド盤。ノルショーピング生まれのスウェーデンのヴァイオリニスト、ユーハン・ダーレネ Johan Dalene(2000–)は、BISレーベルの社主ロベルト・フォン・バール氏がダーレネ9歳の時からその才能に注目していたという逸材です。2019年にはサミュエル・バーバーとチャイコフスキーの協奏曲(BIS SA-2440)でアルバム・デビュー。「ここ10年の間でもっとも素晴らしいヴァイオリニストのデビュー作のひとつ」(「BBC Music Magazine」)、「ダーレネの演奏には、彼が特別な感受性をもった音楽家だとわかる『存在』が感じられる」(「Gramophone」)など、各国のメディアから高く評価されました。2019年11月にはニコライ・スナイダー指揮、新日本フィルハーモニー交響楽団との共演でニールセンのヴァイオリン協奏曲を披露。その圧倒的な演奏で聴衆を沸かせました。ダーレネのアルバム第2弾は、北欧の19世紀から20世紀を代表する作曲家のヴァイオリンとピアノのための作品を演奏しています。
★シンディングの《古風な様式の組曲》は、ライプツィヒに留学した彼が、バロック音楽、18世紀ドイツ音楽の装飾、バッハのスタイルに「デザイン」した作品。技巧的なパッセージも織りこまれ、クライスラーやハイフェッツが好んで演奏したと言われます。ステーンハンマルが、僚友アウリンとの友情に触発されて書いた、胸をうつリリシズムと明るい陽の光に満ちた「アンダンティーノ」と感情の起伏の激しい「アレグロ・パテティコ」の《2つの感傷的なロマンス》。シベリウスが《交響曲第5番》と同じころに作曲した《6つの小品》から〈思い出〉〈牧歌的舞曲〉〈子守歌〉。カール・ニールセンの《ロマンス》は、彼がコペンハーゲンのアカデミーで学ぶ以前に作曲したと推測されている作品です。ラウタヴァーラの《夜想曲と踊り》は、「ガラスのハーモニー」の上をヴァイオリンが「さまよう」夜の音楽と、白昼のダンス。「夜想曲」の素材は、後に、交響曲《光の天使》に再使用されます。プログラムの最後、グリーグの《ソナタ第1番》は、ノルウェーの民俗音楽とその心を「芸術作品」のうちに再生する道を選んだ彼の「一里塚」とみなされる作品です。
★ダーレネのこのアルバムのため BIS Records は、ノルウェーのハドラン Christian Ihre Hadland(1983–)を共演者に起用しました。ハドランは、ソリストとしての活動とともに室内楽のピアニストとして忙しく、ヴァイオリニストのクラッゲルードやメゾソプラノのスーザン・グレアムたちと共演。アンドレーアス・ブランテリードと録音したグリーグとグレインジャーの『チェロ作品集』(BIS SA-2120)は、「グラモフォン」誌の「エディターズ・チョイス」に選ばれています。グリーグの《ソナタ》の第2楽章「アレグレット・クワジ・アンダンティーノ」。2019年から2022年の BBC Radio 3 「次世代アーティスト」のひとり、ダーレネと、2011年から2013年のアーティストだったハドランのふたりがグリーグの音楽に共感を寄せ、こよなく美しい「音楽の時」が生まれます。アルバムの制作と録音をイェンス・ブラウン Jens Braun が担当、ニューショーピング市の「クルトゥルム(Culturum)」でセッション録音されました。
ユーハン・ダーレネ (ヴァイオリン)
スウェーデンのノルショーピング生まれ。4歳からヴァイオリンを習い、3年後、初めてプロの交響楽団と共演。王立ストックホルム音楽大学でペール・エーノクソンに学び、ドラ・シュヴァルツベルク、パメラ・フランク、ゲルハルト・シュルツ、デトレフ・ハーン、ヘンニング・クラッゲルードのマスタークラスに参加した。ヨーロッパ、中国、南アフリカのオーケストラにソリストとして客演、ローランド・ペンティネン、イングリ・アンスネスたちと共演。2018年の「ノルウェー・クレッシェンド」プログラムでジャニーヌ・ヤンセン、ライフ・オーヴェ・アンスネス、ギドン・クレーメルに教わる。デンマークのオーゼンセで行われる「カール・ニールセン国際コンペティション」の2019年ヴァイオリン部門で第1位。2019年から2022年の BBC Radio 3「次世代アーティスト」に選ばれ、2020年/2021年のシーズン、スウェーデン放送交響楽団の「アーティスト・イン・レジデンス」を務める。楽器は、オスロの「アンデシュ・スヴェオース公益基金」から貸与された1736年製のアントニオ・ストラディヴァリウス。
クリスチャン・イーレ・ハドラン(ピアノ)
ノルウェーのスタヴァンゲル生まれ。スタヴァンゲル大学芸術学部(旧、ローガラン音楽院)でエルリング・ラグナル・エーリクセンに学ぶ。15歳でノルウェー放送管弦楽団と共演してオーケストラ・デビュー。1999年からイジー・フリンカに私的に教わり、彼が教えるバラット・ドゥーエ音楽学校に入学。2008年、ソリストとしてのデビューコンサートをノルウェー・オペラで行う。2011年から2013年の BBC Radio 3 「次世代アーティスト」のひとりに選ばれる。イギリスのオーケストラと共演、ウィグモアホールのリサイタル、リーソール室内楽フェスティヴァルへの出演と活動を広げ、音楽の繊細なニュアンスを大切にする演奏スタイルから「ピアノの抒情詩人」と呼ばれる。アンナル・フォレソーの『バルトーク・アルバム』(2L 2L-28SACD)で CD 録音デビュー。ショパンとシューマンのピアノ作品集(Simax PSC-1307)、ハイドン、ブラームス、ボロディンたちの作品を演奏した『ひばり』(PSC-1337)ドメニコ・スカルラッティのソナタ集(PSC-1358)と、ソロ・アルバムをリリースする。