★SACDハイブリッド盤。オーストリアの作曲家、HK・グルーバー(1943-)は、クルト・ヴァイルの世界に心酔し、クルト・ヴァイル財団の名誉終身理事を務めています。『マンハッタン・ブロードキャスト』(BIS-1341)や『バスキング(大道芸)』(BIS-1781)など自作の録音で指揮したスウェーデン室内管弦楽団との新しいアルバムでは、指揮者と歌手として、ヴァイルの3つの作品を演奏しています。
★《一楽章の交響曲》(交響曲第1番《ベルリン交響曲》は、ヴァイルが21歳の時、フェルッチョ・ブゾーニの修士課程で学んでいた1921年に作曲され、ヴァイルの死後、1958年2月12日にNDR交響楽団によるハンブルクのラジオ放送で初めて演奏されました。ヨハネス・R・ベッヒャーの叙事劇『Arbeiter Bauern Soldaten. Der Aufbruch eines Volkes zu Gott(労働者農民軍人. 人民の神への覚醒)』からインスピレーションを得て書かれたといわれます。ジェームズ・ホームズの校訂版による演奏です。
★《交響的幻想曲》(交響曲第2番)は、ヒトラーが権力を掌握しヴァイルがベルリンからパリに逃れる1933年3月までに第1楽章が書かれ、翌年2月、ルーヴシエンヌで全曲が完成されました。ブレヒトとの共同作業の最終作《七つの大罪(Die sieben Todsünden)》の引喩が散見され、「ラルゴ」の第2楽章をグルーバーは「一種の『葬送タンゴ』」とみなしています。1934年10月11日、ブルーノ・ワルター指揮コンセルトヘボウ管弦楽団により初演されました。
★音楽劇《銀の湖》は、古典的均整美とジャズ風リズムとメロディが融合した生気あふれる〈序曲〉と16のナンバーによる作品です。「ある冬の物語(Ein Wintermärchen)」の副題をもち、「食糧不足に苦しむ社会の現実と人々を社会不安から解放する奇跡の可能性の間をさまよう」ストーリーと歌詞を《ロシア皇帝は写真を撮らせ給う(Der Zar lässt sich photographieren)》など2作のオペラで共同したゲオルク・カイザーが執筆しました。ヴァイルがドイツを離れる前に完成。1933年2月18日にライプツィヒとエアフルトとマグデブルクで同時初演されました。この抜粋では「パン屋は夜明けにパンを焼く」と「ちょっとした助言のお代は?」の2つの歌を、マグデブルク初演のエルンスト・ブッシュと、ヴァイル夫人のロッテ・レーニャの録音からアイデアを得て、グルーバーが歌っています。