★1987年にオランダのジャズレーベル、クリス・クロス・ジャズからリリースされた、チェット・ベイカーがカルテットを率いて1978年にオランダで行ったライブアルバム『Live At Nick’s』が180g重量盤にて復刻。ボーナストラックとして「I Remember You」、「Love For Sale」の２曲がレコード初収録。書き下ろしライナー付。
★『Live At Nick’s』は1978年11月にオランダのジャズ・カフェで演奏されたライブ音源。しかし、このアルバムが世に出たのは、チェットが亡くなる1年前の1987年のことである。このアルバムには、’78年2月に活動を開始したばかりのニューヨーク生まれのピアニスト、フィル・マーコウィッツが参加している。マーコウィッツは、1978年と1979年にチェットとヨーロッパ・ツアーを行い、1981年にはニューヨークのファット・チューズデイズで最後のレコーディングを行った、チェットの晩年を支えた一人である。
★1970年代のチェット・ベイカーらしい脱力的なプレイの中に、力強いトランペットのサウンドが空を切るかのように貫いていき、そこに、マーコウィッツの透明感のある張り切ったピアノ・プレイが畳みかけてくる。「The Best Thing For You Is Me」(A.1)で、その様子が流れるスイングの中で聴くことができる。
★身に染みる濃度の高いバラード「Broken Wing」(n.2)や、ウェイン・ショーターの楽曲「Beautiful Black Eyes」(n.3)でのチェットのスモーキーな歌声、そして、「This Is Always」(n.4)のスキャットもかなり味があって、ライブアルバムとしてはとてもバランスの取れた良盤。