★トリオ・ヴァンダラーの最新盤は、フランク作品集。フランクの作曲家としてのデビュー作である三重奏曲、そして充実の五重奏曲、さらにヴァイオリン・ソナタも収録しているという超充実の内容です。その演奏は、盟友ニコラ・アンゲリッシュ(1970-2022)に捧げたもの。アンゲリッシュとトリオ・ヴァンダラーのメンバーたちは音楽院で年齢は違いますが同じ時に学んだ仲で、特にヴァイオリンのヴァイジャベディアンにとってアンゲリッシュは弟のような存在だったといいます。16歳のアンゲリッシュと、4歳上のヴァイジャベディアンは、音楽院が企画したメシアンとドナトーニのピアノ四重奏曲の演奏会のツアーで共演したことがあったそうです。アメリカからパリに引っ越してきたばかりのアンゲリッシュにとってヴァイジャベディアンは兄のような存在になったといいます。メシアンとドナトーニ本人からも、彼らの演奏は高く評価されたといいます。ふたりはヴァイオリンとピアノのためのレパートリーを片っ端から演奏しまくったといいます(アンゲリッシュの初見能力は驚嘆すべきものがあったとヴァイジャベディアンは述べています)。アンゲリッシュのピアノでペヌティエのマスタークラスを受けたときも、フランクのソナタと五重奏曲だったといいます。そんな彼らの間に流れるアンゲリッシュとの様々な思い出も感じられるからか、作品自体のもつ力に様々な思い出が反響し、実に胸をうつ演奏となっております。
フランクのヴァイオリン・ソナタでのヴァンサン・コックが奏でるフランクのソナタのピアノ・パートは、繊細極まりなく、実に丁寧にひとつひとつのパッセージを歌っております。ヴァイジャベディアンのヴァイオリンもどこか寂しさを漂わせつつも、しかし美しく熱く歌っております。フランクのピアノ三重奏曲は、フランクの作曲家としてのオフィシャル・デビュー作。なんといってもピアノの活躍が華々しい作品ですが、名手ぞろいのトリオ・ヴァンダラー、三人そろうと作品自体が自由に語りだし、演奏者達の存在は透明にさえ感じられてしまいます、それくらいにトリオ・ヴァンダラーの芸術性が高いことにあらためて感じ入る演奏となっております。
★ルイ・ヴィエルヌは事実上盲目で生まれ、1894年にサン・シュルピス教会の、そして1900年から37年に亡くなるまで、パリのノートルダム大聖堂のオルガン奏者を勤めました。オルガン作品のほかいくつか作品を残していますが、最も有名なもののひとつがピアノ五重奏曲です。息子の訃報を聞いて書かれ、戦争の惨状を描いたような部分など、壮絶な内容となっております。
動画はこちら→
https://youtu.be/idjgEapynSo