★ベルリン・フィルとハーディング、ネルソンス、ドゥダメル、ネゼ=セガン、ペトレンコ、ラトル、ハイティンク、アバドの8人の指揮者によるマーラーの交響曲全集が17枚組特大ボックスセットとなって登場です。
ベルリン・フィル・レコーディングスは、これまでリリースした商品でも他にはない美麗パッケージで注目を集めていますが、今回のマーラーLPボックスは別格の豪華さと美しさといえるでしょう。カバーアートはCD+BDボックスと同様に、アメリカ出身の画家、彫刻家、映画監督として活躍するロバート・ロンゴの『 Untitled(small earth)』を使用。ロバート・ロンゴは、写真を精巧に模写した、木炭やグラファイトを用いたドローイングによる絵画で注目されているアーティストです。LPスリーブを17枚パズルのように組み合わせると一枚の大きな太陽が出来上がり、商品自体がひとつのアート作品のようです。
★マーラーの交響曲は、今や世界のオーケストラの最も重要なレパートリーのひとつといえるでしょう。ベルリン・フィルにおけるマーラー演奏の伝統は、1895年にマーラー自身が交響曲第2番を初演した1890年代まで遡ります。その後、オットー・クレンペラー、ブルーノ・ワルター、サー・ジョン・バルビローリ、ラファエル・クーベリック、レナード・バーンスタイン、ベルナルド・ハイティンクと数々のマーラー指揮者が客演指揮者としてベルリン・フィルと演奏してきました。
そして、ベルリン・フィルの主要レパートリーとしての定着までの軌跡は、歴代の首席指揮者をみれば一目瞭然です。アルトゥール・ニキシュは、早くからマーラーに関心を持っていましたし、ヴィルヘルム・フルトヴェングラーはかなり距離を置いていました。そして1970年代以降ヘルベルト・フォン・カラヤンはマーラーの作品に力を入れていきます。ニキシュ、フルトヴェングラー、カラヤンまでは、演奏されるのはマーラーの一部の作品に限定されていましたが、カラヤン以降、クラウディオ・アバド、サー・サイモン・ラトル、そしてキリル・ペトレンコは、交響曲全曲がレパートリーとして組み込まれていきます。
当エディションには、完成した9つの交響曲と未完の第10番第1楽章を、過去10年間の演奏から選んでいます。現在の首席指揮者ペトレンコと前任者であるアバドとラトルの演奏、そして客演指揮者で構成されています。中でも、キリル・ペトレンコの第6番は、2020年1月の演奏で、新型コロナウィルス感染拡大直前の演奏会であり、非常にアクチュアルな演奏会でありました。ペトレンコは、高い視点と広い視野に基づいた独特の知性とエモーションで作品を築き上げています。
◆レコード芸術 2021年4月号 特選盤
トレイラーはこちら→
https://www.youtube.com/watch?v=N_FksofX_FQ