★巨匠の戦後初のオペラ公演は、1947年、楽壇にカムバックを果たし、意欲満々の巨匠がドイツのオケを振っての《トリスタン》でした。残念ながら第1幕は原盤が欠落(録音機材が不調で収録できなかったとの説もあり)、第2幕、第3幕も一部はカットされていますが(計3か所、24分間ほど)、それぞれ66分、68分の収録時間。有名な「愛の二重唱」から「愛の死」の終結シーンにいたるまで音楽の主要部は収録されております。音質は録音年を考えればきわめて良好!トリスタン、イゾルデ、マルケ王の主要三役をドイツ人で固めた歌唱陣の充実ぶりもさることながら、何よりも特筆すべきはフルトヴェングラーの指揮!後年フィルハーモニアを振っての有名なEMI全曲録音をも凌ぐ、オーケストラ・コントロールの完成度の高さ!緊迫感に満ち、すさまじいまでの官能と情念の世界が繰り広げられています。
★1984年、世界初出LPとなった伊チェトラ盤。ミラノ、ディスコス社制作のこの音源をキングレコードは同年に国内発売。CDは91年にチェトラ輸入盤を国内仕様で発売しましたが、マスターテープはキングレコードの倉庫に眠ったままでした。今回、このアナログテープ(2トラック、38cm/秒)から初のCD化!日本語解説書(岡俊雄、浅里公三、両氏のライナーノーツ9,600字)付。歌詞対訳は弊社ホームページ(Webサイト)に掲載します(カット箇所も明示)。
★さらにボーナストラックとして、同日の上演前のリハーサル風景の音源を収録。同一音盤に集められるのは世界で初めてとなります。
★「後年の全曲録音はオケがドイツの団体でないことを考えれば、この記録の価値は増大する。事実、そのオケが素晴らしい。繊細で雄弁なニュアンス、劇的な緊迫、重量感、後年以上であろう。」(1991年、CDジャーナル誌の試聴記)
★「この演奏にはすくなからぬ感銘を与えられた。その最大の理由は、フルトヴェングラーの指揮がとくに素晴らしいというほかはないオーケストラ・コントロールである。多分、ピットにマイクを立ててあると思われるほど、1947年録音としてはオーケストラの細部がよくとらえられており、そのオーケストラが歌手の表現を見事にカヴァーしているのである。ワーグナーの楽劇において、オーケストラの重要さを説いたフルトヴェングラーの見解はいろいろな文献に見られる。(その代表的な例はカルラ・ヘッカーの《フルトヴェングラーとの対話》のオペラの章などである)。ドイツの楽壇に復活したフルトヴェングラーの精神的な昂揚が、オーケストラの細部の息づかいにまで、一瞬の緩むところもなく張りつめており、筆者の耳には歌い手以上にオーケストラが本当の主役であるかのようにきこえた。きいているうちに、歌手への不満はほとんど気にならなくなってしまったほどである。」(岡俊雄、1984年記 キングレコード発売LP:K20C-402/4より)
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