★日本人の高橋礼恵とドイツ人ビョルン・レーマン夫妻による実力派ピアノ・デュオのアルバム第4弾はレーガー編曲によるバッハのブランデンブルク協奏曲全曲とオルガン作品集です!
★マックス・レーガーは旺盛な創作をこなすかたわら編曲も数多く行なっていますが、なかでも精神的先祖バッハ作品には特別な思いがあったらしく、さまざまな形態を試みています。名作ブランデンブルク協奏曲は全6篇を1904-5年にピアノ4手用へ編曲しましたが、作品にとって、これ以上考えられないほど理想的な組合せながら、これまでほとんど演奏、録音されてきませんでした。
★それは、レーガー自身がピアノの名手だったにもかかわらず、リストやラフマニノフのような合理的な編曲ではなく、バッハの錯綜する声部をあますことなく4つの手に振り分け、それらが複数の旋律を同時に奏するため、プリモの左手がとてつもなく難しいのと、手の交差が多すぎて1台のピアノでは困難を極めるなど、「机上の空論」とされていたからでした。しかしピアノ・デュオ・タカハシ/レーマンはこれを指定のテンポで完璧に再現し、レーガーの編曲がすさまじく効果的であることを実証しました。
★バッハのブランデンブルク協奏曲は、6曲の楽器編成がそれぞれ異なり、その特性や音色を駆使していることも魅力ですが、レーガーはそれをすべてピアノの色に塗り替え、メロディ自体の魅力や作曲法の巧みさを倍増させ「目から鱗」の連続。数字付低音などのレアリゼーションも興味津々。まさにレーガーの耳を通したバッハの世界となっています。
★さらにフィル・アップとして、レーガーによるバッハの人気オルガン曲3篇のピアノ4手用編曲も収められています。有名な「トッカータとフーガ」の壮麗さ、「パッサカリア」のボルテージの高さ、「聖アン」の感動など、連弾ならではのオーディオ的音世界を満喫できます。いずれもアウディーテならではの高音質録音。「ブランデンブルク協奏曲第5番」のみスタインウェイですが、他はヤマハの銘器の音色をたっぷり楽しめます。
★高橋礼恵とビョルン・レーマンは、ともにベルリン芸術大学でクラウス・ヘルヴィヒに師事。レーマンは現在同校教授を務め、高橋とふたりで日本でもマスタークラスをしばしば行うなど、お馴染みとなっています。このふたりの凄いところは、4手連弾のために書かれた作品はどんなに込み入っていても1台4手で弾ききってしまうこと。2台で分ければ容易になっても、その形態で書かれたことの意味を追求しています。深い楽譜の読み、精巧なアンサンブル、冴えた技巧によるピアノ・デュオ界きってのスターによる大注目盤です!
◆レコード芸術 2020年4月号 特選盤