★LSO Liveからラトル渾身のフランス・プログラム。LSOのパート間の響きの絶妙なバランスの巧さが存分に引き出されたライヴです。DVDとブルーレイがセットになったかたちでの発売となり,映像監督はフランソワ=ルネ・マルタン。 2017年9月から正式に音楽監督に就任したラトル。ラヴェル、デュティユーというフランス音楽の核を成す存在である作曲家の作品と、ラヴェルに師事したドラージュの作品も取り入れた注目のフランス・プログラム。 ラヴェルの「クープランの墓」のオーケストラ版は、とりわけオーボエに超絶技巧が要求されますが、首席奏者スタンキエーヴィチが完璧な演奏を披露。デュティユーの「夢の樹」はラジオ・フランスの委嘱を受けて、I.スターンとフランス国立管のために、1983-85年にかけて作曲、1985年に初演されました。木が枝や葉を伸ばしていくように、連続して増えていくプロセスを描いた作品を、名手カヴァコスとLSOが見事な集中力で展開。「メタボール」は、ドビュッシーを思わせる響きの変奏曲のかたちをとった作品。LSOの音響の混ざり合いの妙を楽しめます。ドラージュの「4つのインドの詩」は、1912年にソプラノと室内アンサンブル(フルート2、オーボエ、クラリネット2、弦楽四重奏)のために作曲されたもの。ドラージュはラヴェルに師事し、「俳諧」など、異国趣味の作品をのこしています。この「4つのインドの詩」は、インド旅行の後に書かれ、インドの旋律とリズム形式を西洋の楽器で様々に再現する作品。ジュリアン・ブロックの歌唱も光る、貴重な新録音の登場です。そしてプログラムの掉尾を飾るのは、ラトルがこれまでに頻繁に取り上げている得意演目、ダフニスとクロエ第2組曲。ラトルの緻密な指揮にLSOが一ミリの乱れもなく反応しています。
◆レコード芸術 2018年7月号 特選盤