★ワーグナー最後の大作《パルジファル》。彼の死後30年間(1913年まで)バイロイト祝祭劇場に独占上演権が与えられていた作品ですが、以降世界中の劇場で上演されています。ワーグナー自ら「舞台神聖祝典劇」と銘打ったこの作品は、中世スペインのモンサルヴァート城を舞台に、磔刑に処せられた十字架上のイエス・キリストのわき腹を刺したとされる「聖槍」とキリストが最後の晩餐に使ったとされる「聖杯」を巡る、「救済」をテーマとした物語。
★今回リリースされるのは、イタリア、パレルモにあるマッシモ劇場で2020年1月に上演された際の映像。パレルモの地はこの《パルジファル》とゆかりがあり、ワーグナーがパレルモのホテル(グランド・ホテル・エ・デ・パルメ)に1881年~1882年にかけて長期滞在していた際に作品を完成させました。またパレルモに滞在中のワーグナーを訪ねてやってきた画家のルノワールがワーグナーの肖像画を描いたのも同ホテルとのこと。
★指揮は、イスラエル出身の指揮者オメール・メイア・ヴェルバー。2020/21シーズンよりマッシモ劇場の音楽監督を務めており、《パルジファル》という挑戦的な演目でデビューを飾りました。また2022/23シーズンからはウィーン、フォルクスオーパーの音楽監督に就任することも決まっている今最も注目される若手指揮者の一人です。
そして演出は、世界中の歌劇場で活躍するイギリス人演出家のグラハム・ヴィック。日本では、1995年のサイトウキネンフェスティバル松本《放蕩者のなりゆき》、1996年のフィレンツェ歌劇場日本公演《ランメルモールのルチア》、2003年のミラノ・スカラ座日本公演《マクベス》《オテロ》、2013年新国立歌劇場《ナブッコ》などを手掛けたこともある名演出家。2016年にマッシモ劇場で《ニーベルングの指環》を演出しており、マッシモ劇場が近年積極的に取り組んでいるドイツ・オペラのレパートリーの拡充に一役買っています。しかし2021年7月17日、新型コロナウィルス感染症により67歳で逝去。数多くのプロダクションを手掛け、世界で最も活躍している現役演出家だっただけに、その死は大変惜しまれます。
歌手陣は、タイトル・ロールにはアイルランド・ダブリンを拠点に活躍するテノール歌手ジュリアン・ハバード、クンドリには優れたワーグナー歌手として注目のフランスのソプラノ歌手キャサリン・フーノルト。アムフォルタスは、ドイツ・オペラを中心に大活躍のトマス・トマソンという実力派が揃っています。
◆レコード芸術 2022年10月号 準特選盤
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https://www.youtube.com/watch?v=RwZfa3uBcPc