★ピーター・バーンスタイン、ブラッド・メルドウ、クリスチャン・マクブライド、そしてグレッグ・ハッチンソン・・・なんとも豪華でそうそうたる顔ぶれによる(今では少し異色にも見える組み合わせのメンバーによる)アルバム!しかし、これこそ、90年代の話題作『Signs of Life』のメンバー。
★90年代、NYに生まれてきた新しいムーヴメントをキャッチしていたオランダのCriss Crossが、このメンバーで録音。クロスオーバーの勢いがやや下火になって、NYの新しいアコースティック・ジャズのムーヴメントが生まれようとしていたその時に録音され、95年にリリース。『Signs of Life』はブラッド・メルドウの参加も目を引き、当時から話題になったものでした。
★そして、本作は、正に、そのメンバーが20年振りに再結集し、ライヴ演奏を繰り広げた記録!そんないきさつだけでも期待をそそってやみません。
★20年の間には、メンバーそれぞれにドラマがあったというもの。ブラッド・メルドウにとっては、デビュー作のリリースが95年で、Art of The Trioでの作品リリースはその後のこと。クリスチャン・マクブライドのデビュー作は94年。つまり『Signs of Life』とは、この世代のメンバーにとってまさしく、原点的な年の演奏を記録した記念碑的な作品ともいえるのです。
★主人公ピーター・バーンスタインにとっては、『Signs of Life』は2作目の作品。その演奏は、メルドウ、マクブライドと比較すると、スタイルを変化させることなく、ジャズの王道に軸足をしっかりおいてきた印象。本作も基本はストレート・アヘッド!な路線を貫きます。しかし、演奏は、20年の間に深く変化していることをこのアルバムが証明します。『Si gns of Li fe』では、ある種、同世代のオールスター・セッションに聴こえるところがありましたが、取り直しも効かないライヴの場で演奏は鮮やかそのもの。クリスチャン・マクブライドのグルーヴ感あふれる骨太な4ビートを刻むベース、しなやかなシンバルとパワフルさを兼ね備えたハッチンソンのドラム、ストレートに演奏することで底しれない実力を感じさせるメルドウ!、そして、シングル・トーンを中心に全てに書かれた譜面でもあるかのようなメロディアスなソロを繰り広げていくピーター・バーンスタイン!!そこには、90年代、やや地味めにデビューした世代の明らかな自信に満ちた表現あり、今や、シーンにとって中堅となった世代の気概に満ちた演奏があります。
★ライヴということもあって、2曲をのぞいて、全てが、10分以上の演奏。しかし、長尺な印象は一切ありません。
★ちなみに、オープニングと4曲目は、『Signs of Life』からの楽曲。20年を経て、同じ曲を演奏し、作品として収録されているのも興味深いところです。
★レコーディングは、Smokeではなく、この作品は、ジャズ・アット・リンカーン・センターにて。NYという場で、ミュージシャンとして堂々と活動し、渡ってきたメンバー4人の演奏。ジャズという歴史のマイルストーンとも言うべき、2017年注目のリリースです。