★2010年、ジャズ・アーティストの登竜門となるセロニアス・モンク・インターナショナル・ジャズ・コンペティションのウィナーとなり、2016年にはグラミー賞最優秀ジャズ・ヴォーカル・アルバムに輝く等、今最も注目を集める女性ジャズ・ヴォーカリスト、セシル・マクロリン・サルヴァントの一年ぶりの新作。
★1989年マイアミ生まれ、シンガーになるきっかけは母親の影響で、当初は本人の強い意志というものではないらしく、モンク・コンペティションへも、フランスの音楽学校の先生の薦め。正確には、応募の締め切りにも間にあわないタイミングだったとのことなので、どれだけ周囲の期待があったかも伺われます。
★しかし、その歌を聴けば、誰もが納得。6月には丸の内コットンクラブで二度目の来日公演もあり、すっかり日本でもおなじみになったマクロリンは粉うことない本格派。最初に好きになったミュージシャンに、サラ・ヴォーンをあげ、最近はまっているジャズ・シンガーにカーメン・マクレエを挙げるところも王道ですが、正確なピッチと、ダイナミズムあふれる感情豊かな表現は、世代を越えて、現代のヴォーカル全般で、屈指の存在といえるでしょう。
★本作は、そんな彼女がNYのジャズの殿堂、ヴィレッジ・ヴァンガードで行ったライヴを収録した作品!
★たっぷりCD2枚組(LP3枚組)。その中には、ストリングスをフィーチャーしたトラックもあり、グラミー賞を受賞した前作『フォー・ワン・トゥ・ラヴ』の延長線上といえる、ミュージカル的なものも、はさみつつ、シンプルに、オリジナルのトリオをバックにした歌唱も、魅力的に響きます。来日公演でも、余裕もたっぷりに演奏を聴かせたアーロン・ディールは、ジュリアードを出た、これまたジャズ界の秀才。ハード・バップの伝統をおさえ、若くして気品さえ漂わせるピアノは、古き良きジャズが薫り、セシルのヴォーカルと心地いいスウィング感を生みだします。どの曲も安定感たっぷりな中で、たとえば、CD1=M6“Never will I marry”は、力強い4ビートがグルーヴを生む一曲。楽曲がシンプルなだけにピアノ・トリオと、自在なセシルのヴォーカルの息の合った対話が特に鮮やかなコントラストを描き、ヴァンガードに興奮をもたらしています。また、M10は、コード楽器なしのベースとドラムだけをバックにしての歌唱。その上で、声色なども変化させ、絶妙なリズム感で豊かな物語を紡ぎ出すところも実力の証といえます。
★NYという厳しいジャズの現場、しかも、その最も伝統と格式の高いヴァンガードの場を熱狂させられる存在!
★セシルは実に、本作のほかに、サリヴァン・フォートナーとのデュオ作品もすでに録音済みなのだとか。そちらでは、スタンダード曲の他、アレサ・フランクリンやスティーヴィー・ワンダーの曲も歌っているとの噂!本作で通算4作目、Mack Avenueで3作。その動向からは、目が離せそうにありません!