★ウェス・モンゴメリーの未発表音源を次々と世に送り出し、ファンを狂喜乱舞させてきたレゾナンス・レコードがまたまたやってくれました。スタン・ケントン楽団などへアレンジを提供していたことで知られるキャロル・デキャンプ秘蔵の音源が陽の目を見ます!
★編成は、(1)ピアノ・カルテット、(2)オルガン・トリオ、(3) ホーン入りセクステット、(4)ドラムレス・ピアノ・トリオ(ナット・キング・コールなどで知られる編成)、と4種類に分けられます。
★参加メンバーは、いずれも“推定”ではありますが、盟友メルヴィン・ライン(org) の他、ウディ・ハーマン楽団などで知られたジョン・バンチ(p)、ジム・ホールのデビュー作でスウィンギーなプレイを聴かせた早逝の名手カール・パーキンス(p)、そして、ジョージ・ラッセルの『Jazz In The Space Age』(1960年)などへ参加する名手デヴィッド・ベイカー(tb)とデヴィッド・ヤング(ts)らが名を連ねます。
★“Jingles” ”Four On Six””Mr. Walker” ”West Coast Blues”といった、のちのリヴァーサイド作品 『The Wes Montgomery Trio』(1959年) と 『The Incredible Jazz Guitar』 (1960年) へ収録されるオリジナル曲の最初期バージョンが並んでおり、これらの完成度にはただただ驚愕!また、マイルス・デイヴィスが 『Kind Of Blue』 (1959年)で発表したばかりのモード曲“So What”がさっそく演奏されており、インディアナポリスという地方にいながら、ジャズの最先端に対してしっかりとアンテナを張り巡らせていた姿勢がうかがえます。ジャム・セッション風“Stompin' At The Savoy”のドライブ感は強烈で、この白熱した演奏から、あのチャーリー・クリスチャンの名演を想起するファンもいるかもしれません(“The End Of A Love Affair”のソロの途中では、クリスチャンが得意としていた“Topsy=Swing To Bop”のテーマも引用されます)。“Summertime”では[シングル・ノート→オクターブ→ブロック・コード]という伝家の宝刀を、“Opus De Funk”ではパット・マルティーノに受け継がれた休みなく8分音符が連続する瞬間を、それぞれお見逃しなく!本作中、最も熱く燃え上がっているのは古いスタンダード曲“Between The Devil And The Deep Blue Sea”でしょう。叩き付けるようなピアノのコード・バッキングに対し、ウェスは「売られた喧嘩は買ってやる!」と言わんばかりの豪胆なアドリブで応酬……もう壮絶!そして、情緒豊かに歌い上げる“Easy Living”等々。兎にも角にも、メジャー・デビュー直前の若々しくも完成されたウェスのオンパレードです。
★収録時の詳細は不明ですが、スタジオもしくはウェスの自宅と思しき場所から、明らかに歓声が入るライヴもしくはパーティのようなものまであり、このプライベート感もファンとしては垂涎。
★ブックレットには、音源の所有者キャロル・デキャンプの甥でギタリストのロイス・キャンベルの他、ジョン・スコフィールドやジョージ・ベンソンといったトップ・ミュージシャンのインタビューも含まれ、彼らの“ウェス観”は非常に興味深いものがあります。
★ライオネル・ハンプトン楽団の退団(1950年)以降、リヴァーサイドからのメジャー・デビュー(1959年)まで、比較的謎とされていたその期間が、レゾナンス・レコードがこれまでリリースしてきた『Echoes Of Indiana Avenue』『In The Beginning』『One Night In Indy』、そして今回の『Back On Indiana Avenue』によって明らかになってきました。偉大なミュージシャンのエピソード・ゼロを補完させるためにも、ファンにとってはマスト・バイな1枚です。