★当代を代表するギタリスト、ネルス・クラインとジュリアン・レイジによる、世代を超えた異種、異色ギター・デュオ共演作!
★56年生まれのネルス・クラインは78年にレコーディング・デビュー、88年には初リーダー作をリリース。ネルス・クライン・シンガーズを中心にボーダレスなギター表現が話題で、今や、ウィルコのメンバーであることでも広く知られるところでしょう。一方、ジュリアン・レイジは、88年生まれ。12歳でゲイリー・バートンに認められて以来ジャズ街道中心に歩いてきたギタリスト。つまり、ネルス・クラインとは30歳の開きがあり、スタイルも一見異なりますが、お互いのリスペクトは、大きなものがあります。
★そんな2人の出会いは、他でもない、双方がリスペクトしてやまないジム・ホールを囲む昼食会でのこと。2人はすぐさま、意気投合。親近感を抱いたとのことで、その尊敬の念と、シンパシーは、ここに結実しました。
★左チャンネルがジュリアン・レイジ、右チャンネルが、ネルス・クライン。お互い2本ずつのギターをもっての演奏は、アルペジオと即興のライン、またユニゾンのラインを息もぴったしに奏で、まるで会話をしているかのよう。このオープニングを聴けば一聴瞭然。これが単なるセッション的なギター共演でないのは、明らかです。
☆もちろん、オーバー・ダブも一切なしのライブ録音で、ベース部分と、ソロ的な部分を、表に裏に、裏に表に、繰り広げる部分あり、鋭敏にフリー・インプロ的な演奏を見せる場面あり。しかし魅力は、即興ならではの瞬間的な演奏の面白さはもちろんのこと、どんな場面も、モチーフのようなものが連なって、イマジネーション豊かな物語を描きあげていくところでしょう。
★演奏する曲はすべて2人のオリジナルで、即興色は強めですが、世界的には、ジム・ホールとパット・メセニーのデュオであったり、パット・メセニー、ビル・フリゼールをフィーチャーしたマーク・ジョンソンのベース・デザイアーズ第3作につながるイメージも。
★というのも、この作品は全体通して、ジム・ホールに捧げていると、アーティスト自身も語っていますが、ジム・ホールとまた、ジム・ホールを敬愛したアーティストの姿が、そこかしこに見え隠れします。
☆中でも興味深いのが、M-5。もともと、この曲はジム・ホールにインスパイアされた曲で、ネルスはネルス・クライン・シンガース名義の『Giant Pin』であったり、『Initiate』で演奏してきたもの。しかし、合い方にジュリアン・レイジを迎えた演奏は、よりPOP&カントリーな色彩。3分過ぎには、メセニー・グループが元来表現してきたアメリカの平原を思い起こさせるような音空間が繰り広げられます。
★そうした意味において、本作は歴史的に、ジム・ホールの遺伝子を引き継ぐギタリスト2人のデュオ作とも位置付けられましょう。一方では、オーネット・コールマンと、朋友スコット・アメンドゥラの名前を掛け合わせるM7 のようなユニークぶりを見せるネルスが、当代の若手ギタリストと、アコースティック的なギターの世界にフォーカスした21世紀のクリエイション。ジャズギターの歴史に連なる一作です。
使用楽器
≪Nels Cline≫
*ギブソン1965年製 バーニー・ケッセル・モデル
*ギブソン1962年製J-200 アコースティック(スチール弦)
≪Julian Lage≫
*リンダ・マンザー製アーチトップ・モデル
*マーチン1939年製 000-18 アコースティック(スチール弦)