★スイス・ロマンド管弦楽団の首席ファゴット奏者を務めるセレステ・マリー・ロイによるソロ・アルバムが登場です。MDGレーベルはこれまでにファゴット・アンサンブルによるゴルトベルク変奏曲(MDG. 90319146)やギュルツェニヒ・ファゴット五重奏団の録音などファゴットにフォーカスしたアルバムをリリースしていますが、今回はJ.S.バッハ、C.P.E.バッハ、そしてフリードリヒ・クーラウの無伴奏フルートのための作品をファゴット用に編曲し演奏しています。セレステ・マリー・ロイは、バロック・ファゴット奏者としても活躍しており、現代の楽器においてもその熟練した技術で軽やかに奏しています。
アルバムの最後に収録されているクーラウは、未出版の原稿がすべて火事で消失してしまったにも関わらず、200曲を超える作品を残した多作家でありました。1825年にウィーンでベートーヴェンと出会い、ベートーヴェンは彼に敬意を表し「Kühl, nicht lau(涼しくて、なまぬるくない)」WoO.191というユーモア溢れるカノンを作曲したという逸話も残っています。ここに収録されている3つの幻想曲は、モーツァルトの《ドン・ジョヴァンニ》の2つのアリアの変奏で始まり、フランチェスコ・ビアンキのカンツォネッタで終るという、当時流行したハーモニームジークのスタイルで書かれています。