★類まれなる集中力と高い技術、明晰なアーティキュレーション、それでいてふくよかで豊かな柔らかさもある音楽。いま世界中から熱き視線を集めるヴァイオリニスト、米元響子が待望の初CDをリリース。演目はイザイの無伴奏ソナタ全曲、さらに最近になって発見された未完のソナタも収録しているという注目盤です。録音は最高位のDSD 11.2MHzで行われており、米元がすぐそこで弾いているような臨場感あふれる録音となっています。
★米元響子は1997年パガニーニ国際ヴァイオリンコンクール( イタリア) において、史上最年少13歳で入賞。その後、2001年日本音楽コンクールでも優勝、その後も様々なコンクールで優勝入賞を重ねているまさに実力者。2018年3月末からは、サントリー芸術財団より1727年製ストラディヴァリウスを貸与され、その芸と音色に凄みも増し、ますますその音楽は充実してきています。米元はガット弦を使用しており、その音色はあたたかく力強く、しかも抜群の安定感です。これまでCDがなかったのが不思議なほどですが、それはレコーディングには大変慎重な姿勢を見せていたから。デビュー20周年を迎え、また素晴らしい楽器の力も得て、まさに機が熟したといえるこのタイミングでの初CD となります。イザイが暮らした街リエージュで、米元が実際にイザイの自筆譜に触れたことも、録音を決意する決定的な後押しになったといいます。 【イザイのヴァイオリン・ソナタ】 6曲から成るイザイの無伴奏ヴァイオリン・ソナタop.27は言わずとしれた難曲ぞろい。自身優れたヴァイオリニストでもあったイザイが、バッハの無伴奏ソナタ&パルティータを強く意識して書いたもの(イザイの自筆譜にはバッハの各曲の調性のメモもあります)。各曲が名ヴァイオリン奏者やイザイの高弟に捧げられているのも特徴。第1番はシゲティ、第2番はティボー、第3番はエネスコ、第4 番はクライスラー、第5番はイザイの高弟でイザイ弦楽四重奏団の第2 ヴァイオリン奏者を務めてもいたマシュー・クリックボーム、第6 番はイザイの高弟、マヌエル・キロガに捧げられています。バッハの引用があったり、グレゴリオ聖歌の引用があったり、また、バロック風、スペイン舞曲風、印象派絵画のような楽曲など、実に個性豊かで超絶技巧も随所に盛り込まれた楽曲ぞろい。今回米元は常にイザイの自筆譜のコピーを手元に置き、イザイの声を追い求めながら録音に臨みました。米元の技術の高さと極めて力強く明晰なアーティキュレーション、ふくよかで豊かなやわらかさもある音楽で、これまでにないイザイが登場したといえるでしょう。 【未完のソナタ(新発見)も収録】 最近発見され話題となった注目の未完のソナタは、イザイが遺した鉛筆書きのスケッチ等を含む譜集に収められていたもの。この譜集はもともとはイザイ(1858-1931) の死後、英国のヴァイオリニスト、フィリップ・ニューマン(1904-1966)に遺族が寄贈したもの(ニューマンは、イザイの臨終の枕元で、無伴奏ソナタ第4番を演奏した人物でもありました)。ニューマンの死後、その譜集はベルギーの女性ヴァイオリニストでニューマンと親しい友人関係だったジョゼット・ラヴェルニュ(1921-2015) の手に渡り、彼女の死後、ブリュッセル音楽院の図書館に彼女の資料コレクションが寄贈されました。件の未完のソナタ(第3楽章の途中で終わっている)は、イザイの手書きのタイトルには「第6番」とあり、ハ長調で書かれています。バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番もハ長調のため、イザイはバッハを意識して当初このハ長調で構想したのかもしれません。華やかな技巧も盛り込まれた美しい作品です。今回の録音では、補筆補完等はせず、イザイが書き遺したところまでを演奏しています。 【DSD 11.2MHzの高品位録音】 米元の奏でるヴァイオリンのつややかにして変幻自在な音色、力強い推進力と、それでいて全体に漂う米元の音楽の豊かさとやわらかさももれなく伝えるDSD 11.2MHzという高品位のスペックで録音。SACDハイブリッドの発売です。
◆レコード芸術 2019年5月号 特選盤
CDはこちら
https://www.kinginternational.co.jp/genre/kkc-057/