★コルネットや、神の楽器トロンボーンの音色を基調とし、声楽と重ね合わせ天上の音楽を聴かせる名門アンサンブル「コンチェルト・パラティーノ」による美しいアルバム。声と器楽の絶妙な混じりあい、微妙な響きの無限のグラデーションを堪能できます。
★1575から1577年にかけて、ヴェネツィアはペストの猛威によって人口の3分の1を失うという大打撃を受けました。人々は伝染病の収束と神への感謝を祈念するために「レデントーレ教会」の建設をはじめ、1599年に教会が完成、当時最高の音楽家たちによる音楽が無事演奏されるに至りました。
★このアルバムはレデントーレ教会で響いた音楽の再現でありながら、現代のポスト・コロナにおける音楽の在り方をも考えさせるもの。2022年の新作であるロバート・キールの『闇から光へ』を収録し2つの時代を往来します。『闇から光へ』はコンチェルト・パラティーノに寄り添う編成で、響きもバロック語法を採り入れて書かれた楽曲。ひどく美しく、それでいて強い祈りを感じる作品です。ふたりのガブリエーリをはじめヴェネツィア・バロックの巨匠たちの音楽も絶品。嘆き悔みながらも光のほうへと進んでいく感覚がアルバム全体に流れていて感動的です。
ロバート・キール(1952-):ヴィジリア『闇から光へ』(2022)
https://soundcloud.com/bruce-dickey-1/kyr-virgil-from-darkness-into-light-excerpt