★ノルウェーのチェンバロ奏者、ケルンの音楽大学の教授を務めるシェティル・ハウグサンは、今日の「アーリーミュージック」を代表する音楽家のひとりに挙げられます。アムステルダム音楽院でレオンハルトに師事、1975年に「最優秀賞」を得て卒業しました。パリとブルージュの国際コンペティションを経て、ソロイスト、室内楽奏者、ノルウェー・バロック管弦楽団とアルテ・レアル・アンサンブルの指揮者として、ヨーロッパとアメリカのコンサートとフェスティヴァルで演奏しています。J・S・バッハの《イギリス組曲》(PSC1329)に次ぐ録音はジャン=フィリップ・ラモーのクラヴサン曲。〈前奏曲〉から〈メヌエット〉、「フランス舞踊組曲」に倣った10曲の《クラヴサン曲集 第1巻》(第1組曲)。〈アルマンド〉から〈村娘〉と〈ロンドーのメヌエット〉までの「第2組曲」と〈やさしい訴え〉から〈足の不自由な女〉の「第3組曲」の《クラヴサン曲集》。〈アルマンド〉から〈ガヴォット〉と〈6つの変奏〉の「第4組曲」と〈トリコテ〉から〈エジプトの女〉の「第5組曲」の《新クラヴサン組曲》。クラヴサンを「通奏低音」ではなく独立した声部として扱った《コンセール形式のクラヴサン曲集》から、ラモーがソロ曲に編曲した4曲。1747年ごろ作曲された、ラモーの最後のクラヴサン曲とされる《王太子妃》。《優雅なインドの国々》のソロ編曲版と、バルバトルの作品とされてきた《Les petits marteaux de M. Rameau》を除く、ラモーのクラヴサン・ソロ曲の全集です。ハウグサンは、ゆったりしたテンポを中心に、ひとつひとつの曲と対話するような雰囲気でラモーを演奏。『クラヴサン曲集』の代表的録音のひとつ、バロック時代の振付を参考にしながらラモーの作品を優雅で溌剌とした音楽として示したクリストフ・ルセの録音(L’ Oiseau-Lyre)とは趣きも思考も異なるものの、同じように洞察の深い、「楽興」にみちた音楽を聴かせます。ケルンのドイツ放送室内楽ホールで行われたセッションに使われた楽器は、ハウグサン自作の後期フランドル・タイプの2段鍵盤チェンバロ。フォルクレ父子の『クラヴサン曲集に編曲されたヴィオール曲集』(PSC1317)と同じ楽器です。ドイツ放送との共同制作。フランスの偉大な作曲家の没後250年を記念するアルバムです。