★ノルウェーのホーカン・アウストボー(1948–)は、メシアンとドビュッシーのピアノ作品を全曲録音するなどフランスのピアノ音楽に特別な愛着を持っています。2018年秋、アウストボーの70歳の誕生日を記念し、もうひとりのフランスの大家、モーリス・ラヴェルのピアノのソロ作品全集がリリースされます。ラヴェルの最初のピアノ曲、スパニッシュギター風の音調の《グロテスクなセレナード》、気品のある《古風なメヌエット》、優しくもの悲しい《亡き王女のためのパヴァーヌ》、泉や滝や小川から聞こえる水音からインスピレーションを得た《水の戯れ》、優美な《ソナティナ》、アヴァンギャルドの芸術家サークル「アパッシュ」のメンバーに捧げた《鏡》、ベルトランの幻想の詩による《夜のガスパール》、ラヴェルが最後に書いたピアノ曲、第一次世界大戦で失くした戦友たちの思い出に捧げた6つの楽章の《クープランの墓》。「ラヴェルが彼の音楽を通じて示す複雑で神秘につつまれた領域に深く入れば入るほど、解けない謎が残る。彼の音楽をずっと演奏してきて、今なお、どう考えるか迷う側面のあることを認めねばならない」(アウストボー)。鮮やかな熟練の技の陰にラヴェルのもっとも暗い面が隠れていることもアウストボーの演奏で示されます。この録音の楽器にアウストボーは、1893製造のスタインウェイ Model D-274 を選びました。「ラヴェルのピアノ曲は、彼の管弦楽作品と同様、緻密で色彩的に書かれている。ペダルはピアノの『オーケストレーター』だと彼は言う。事実、鐘や水を連想させる響きは、しっかりしたペダルの使い方なしに考えられない」。アルバムの共同制作とエンジニアリングを、ブーレーズ、カーター、スコートゥンの作品を弾いた『Wanted(お尋ね者)』(Aurora ACD5071)などのアルバムでアウストボーとコラボレートしたアルネ・アクセルベルが担当。オスロのソフィエンベルグ教会で録音セッションが行われました。