BIOGRAPHY

イザベル・ファウスト
(ヴァイオリン)Isabelle Faust,violin

 音楽的歴史文脈とそれにふさわしい楽器、そして現代の知識に基づいた忠実な音楽解釈で世界中の聴衆を魅了し、幅広い作品をレパートリーとする現代最高のヴァイオリン奏者の一人。
クリストフ・ポッペンとデーネシュ・ジグモンディの両氏に師事。1987年アウグスブルクの「レオポルト・モーツァルト・コンクール」、1993年「パガニーニ国際ヴァイオリン・コンクール」に優勝し、一躍世界的に注目される。特筆すべきは、古楽器からモダンまであらゆるスタイルと様々な時代のレパートリーを網羅していることである。
 古楽器演奏では、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲をデイヴィッド・スターン指揮で古楽器アンサンブル「コンチェルト・ケルン」と共演する一方、フェルドマン、リゲティ、メシアンなどによる前衛的作品も見事に弾きこなす腕前を持っている。2001年、ヤノフスキ指揮ミュンヘン・フィルとエックのヴァイオリン協奏曲を、2004年にはマルコ・レトーニャ指揮ミュンヘン響とジョリヴェのヴァイオリン協奏曲のドイツ初演を、さらに、ヴィトマンやラース・グラウゴーの作品の世界初演も行った。2009年には、トーマス・ラルヒャーとミカエル・ジャレルの新作を初演した。室内楽演奏家としても、数々の音楽祭に定期的に出演している。
 録音 はハルモニア・ムンディより、バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ& パルティータ、ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全集(ピアノ:アレクサンドル・メルニコフ)、ブラームス:ヴァイオリン協奏曲(ハーディング指揮マーラー室内管)など多数リリース。ベルク& ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲(アバド指揮モーツァルト管)ではグラモフォン賞、ディアパソン・ドール賞、エコー・クラシック賞、レコードアカデミー賞を受賞。
 使用楽器は、ストラディヴァリウス「スリーピング・ビューティ」(1704年製)。

ガット弦はストラディヴァリウス“スリーピング・ビューティ”の音に物理的な側面を与えています。“実体”がより強く知覚できるし、大まかな特徴はより効果的に引き出されます。ストラヴィンスキーにとって、この弦はどんな使用にも耐え得るものだったに違いありません。ここには外向的なパントマイム風の演奏がたっぷりあります。この音楽の大衆的な、巡回サーカスのような特質は、これらの古楽器によって表に浮かび上がります。それは多彩な色にあふれています。古楽器が純粋に語り、歌い、泣き、踊るからです。(イザベル・ファウスト)